2015年5月22日金曜日

診断せずとも治療はできる

医学教育では多くの場合、診断していくというのを最初の目標にしています。それは診断して、それに合わせた治療法というのを決めているからです。いわゆるガイドラインというものです。精神科の教科書も病名、症状、診断基準、鑑別診断、必要な検査、治療法という流れで書かれています。つまり教科書のほとんどのページは診断に割かれており、肝心の治療は少しだけ。診断が重視されているわけです。

でも僕は小児科医時代、そして精神科医になってからも、これに疑問を感じていました。診断はしたはいいけど、治療法はこれだけです、ということになる。この壁にぶつかって心底の違和感を覚えた人がその病気の原因や治療法を探すために研究者になっていくのだろうとも思います。

精神科の中でも診断基準は決まっているのに、治療法が決まっていないものがたくさんあります。発達障害、人格障害、摂食障害、依存症など、どれも治療が難しいと言われるものばかりです。

そう考えると、今の医学では診断名から治療法へという流れだと行き詰まる(器質的疾患などの一部を除いて)。ならば診断名に関わらず、治療できる方法のほうがいいですよね。僕の知る範囲でも、診断名に関わらず治療できる精神療法や心理療法は複数あります。おそらく大切なのは診断よりも、状態の把握です。木を見て森を見ずではありませんが、状態を把握すれば、発達障害や人格障害でも、今の現在の状態よりはよくすることはできます。

医者は患者さんに出会ったとき、この人はどの診断になるのかなという目が働くように教育されています。でもそんなことより、状態を把握して今よりも状態をよくするにはどうしたらいいのかという発想をするほうが患者さんのニーズに応えることになるのではないでしょうか。僕はそんなことを精神療法を学ぶ中で知りました。状態をよくする手段として薬物療法、手術、リハビリ、精神療法、その他の多くの治療法があるのでしょう。このうちどの武器をその医者が持っているのかということです。

きっと患者さんやご家族の多くは診断を望んでいるのではなく「しんどいことをわかってほしい、今よりも楽になりたい、そして治して欲しい」。これではないでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。