2014年10月31日金曜日

クライアントは勝手でわがままが当たり前

連絡なしで予約の日に来ない、いきなり訪ねて来られて診断書をその日に書いてほしい、転院するから紹介状を次の医療機関にFAXしておいてほしい。

仕事をしていて、患者さんに対して「この人、勝手なことを言うなあ」と思うことがあります。いろんな要求を受ける立場の僕らとしては正直、内心、気持ちのいいものではありません。もちろん、それに対して、対策を立てて、真摯な姿勢でまじめに来てくれている患者さんに不利益がないようにしています。

でもこれって、どうなんでしょう。僕が患者さんの立場で、毎日仕事で忙しいし、すごく疲れてるし、会社から早く診断書を持ってこいと言われてるし、次にもっといい医者がいると聞いたので早く行って治してほしいし。。。

こんな風に考えると、十分あり得てしまう。僕もこんな患者さんになる可能性がある。立場や見る角度を変えれば、ありえる話。僕だって、クライアントの立場になれば、適当にしたり、勝手なことをしている可能性は十分にある。だめもとで、わがままなことを電話や窓口で言うこともある。そう思うと、クライアントは勝手でわがままなのが当たり前なのかなと思います。もちろん、そのわがままを通し続けて、相手に迷惑をかけるのは違うでしょう。ただ、その行動をしてしまうことは誰にでもあり得ること。いつも聖人君子な人なんていない。

僕は上にあるようなことを言われて、内心は気持ちはよくないですが、その人の立場を想うと、「もしかしたら大変なのかもしれないな」と思うようにしています。なぜそうするのかの理由は簡単です。その患者さんに大変な事情があって、無理な要求をされたと思えば、僕ら自身の気持ちが収まって、楽になれるからです(笑)そして、そうしておくと、また次の患者さんに優しくなれるから。これって大切なことだと思っています。


2014年10月29日水曜日

夜明け前が、一番暗いんよ

先日のプロフェッショナル、魚ととも生きる男たち。見られましたでしょうか?

明石の鯛は貴重で高値で取引されるそうです。その明石の鯛だけを15歳から現在の71歳まで捕ってこられた方が出ていました。15歳で漁師になって、鯛だけを捕るために漁をしてきたのに、他の魚を捕って生計を立てるしかなく、胃潰瘍になって入院したこともあったそうです。そして、鯛が思うように捕れるようになったとき、すでに50歳だったそうです。

いつまでたっても鯛がとれないでいた日々。漁から帰ってきたら、奥さんが「夜明け前が、一番暗いんよ」と一言。

僕、このとき、なんか涙が吹き出ちゃいました。これに似た言葉はずっと知っていたけど、あらためてこの言葉を聴いて、すごく心に響きました。夜明け前が一番くらい。辛い時に、この言葉は自分を慰めてくれるなあと思いました。

それから、戸田さんがこんなことも言っておられました。
「石の上にも3年やけど、わいには30年かかったわ。人生、25年ずつ3つに区切ったらええのや。初めの若い25年はがむしゃら、次の25年は勉強して、あとの25年はゆとりになってたって考えれば、人生満足やわ。どんな職人だってそうやがな。そんな端から端まで充実した人間なんかおれへんもんな。」

生きていて、結果が出ることなんて、なかなか来ないのが普通。一生結果が出ない人もいるわけです。ある一発芸人さんがテレビで言っていました。「一発でも当てられたのは幸せ。ゼロ発芸人のほうが私らの業界では多いわけですから」。

普段はひたむきに日々の努力を重ねてじっと待つ。僕はせっかちなので、待つということがすごく苦手です。待つことの大切さを自分に言い聞かせる機会をいただきました。

2014年10月26日日曜日

神は代償を求める

ロビン・ウィリアムズさんが自殺で亡くなったそうです。今を生きる、グッド・ウィル・ハンティング、ミセス・ダウト。涙を笑いで表現する。普段あまり映画を見ない僕でも見たことのある作品ばかりです。

人懐っこい笑顔、センスのあるユーモア、あふれる知性。映画の中から十分それらが伝わってくる。こんなすごい俳優っているんだなと学生の時に今を生きるを見て思ったことを思い出します。

長く交流のあった字幕翻訳者の戸田奈津子さんいわく、人前ではエンターティナーだが家族だけの時は物静かな人だったそうです。しかも、その裏で、長年のアルコール依存症、薬物依存症、うつ病、晩年はパーキンソン病も患っていたそうです。

俳優のテリー・ギリアムさんが取材に対して、「あれだけの才能を与えると、神は必ず代償を求める」。僕自身は決して才能を与えられていないので、心配はいらないはずなのに、なぜかこの言葉には背筋が寒くなる気がしました。美人薄命という言葉もありますが、あまりにすばらしいものを持ってしまうと、その代償は大変なものになるのかもしれません。僕はこんなとき、いつも人生はバランスなのだと思うのです。もし調節ができるのなら、できるだけ調節できる範囲で、自分の欲望の7割くらい、そこそこで抑えておいた方がトータルでは幸せなのかもしれない。ただ、ロビン・ウィリアムズさんは才能を与えられてしまったので、自分でもどうしようもない部分があったのかもしれない、などといろいろ想像するわけです。。。

2014年10月21日火曜日

駅のエレベーターに乗る中高生

後ろに高齢者やベビーカーの方がいるのに、駅で高齢者、障害者、ベビーカー用のエレベーターに談笑しながら乗る中高生をよく見かけます。

僕個人としては憤りを感じますが、そういう問題ではなく、少しそこで考えてみました。どうして彼らは他にエレベーターを必要とする人がいるのに、談笑しながら乗れてしまうのか。

いろんな状況が考えられます。他に利用者がいなかった、体調が悪かった、友達に誘われたなど。僕も高校生のときに熱がある日は間違いなく乗っていたと思います。別にここで倫理観を振りかざしたいわけではなく、本質的な問題は他の人を見る視野、想像力、思いやりではないかと思うのです。

生まれつき、誰にも教えられていないのに、親や兄弟、友達に思いやりをもって接することができる子がいます。でも教えないとできない子がほとんどでしょう。ここで僕は教育の力の大きさを感じざるを得ません。視野の広さ、想像力、思いやりは教えることで伝えることが可能です。駅で軽くエレベーターに乗れてしまう子は家庭でどんな教育を受けていたのか。親がその子のために目の前の便利さ楽さを優先してくれたのでしょう。高齢者がいようが、席が空いていれば親がその子に座ることを促してくれたのでしょう。その瞬間的な、親が子に楽にさせてあげられるという考えのもとに。。。

いつもと同じ結論ですが、何も気にせずエレベーターに乗ってしまえる子よりも、周りを見て、高齢者や障害者にエレベーターを譲れる子のほうが社会から愛されるのではないでしょうか。エレベーターを見て、そんなことを感じました。

2014年10月19日日曜日

仕事の自分と仕事以外の自分

「マイクの前では日本一上手なアナウンサー。マイクを離れたら日本一下手なアナウンサーだと思いなさい」

フリーアナウンサーの小林麻耶さんが新人のころ、先輩からこんな言葉をいただいたそうです。

すばらしい言葉だと思います。僕はこの言葉を仕事の本番では自分はできるんだと信じて仕事に臨めということ。仕事を離れたら、どんな人からも学ぶ姿勢で、謙虚になれということだと理解しました。もちろん、仕事で不遜な姿勢を持てというわけでもありません。

いつも思うことですが、僕にとって診療は試合であり、本番であり、バッターボックスであり、試験であり、リングの上に立っていることと同じです。そのつもりで毎日診療に臨んでいます。つまり、試合中にどんなことが起きようが、ひるんでいる暇はありません(もちろん、内心ひるんでしまうことは多々ありますが(笑))。基本的には自分はこの患者さんやご家族にに何かできることがあるはずだと信じています。そして、一度仕事を離れたら、仕事のことは極力離れますし、医者であるという意識もほとんどありません。むしろ、リングから降りている時間帯に十分な休息、充電、あるいは仕事以外の人生を楽しみたいと思っています。その中で医者以外の人に会って、いろんなお話を聴くわけです。それがお鮨屋さんの大将だったり^^

仕事と仕事以外では、いろんな意味で自分のチャンネルを切り替えることは本当に大切であると思っています。仕事をする方々に、何かのお役にたてるかなと今日はこの言葉を紹介しました。

2014年10月13日月曜日

児童精神科クリニック交流会

今年も日本児童青年精神医学会に参加してきました。その中で、今年は児童精神科クリニック交流会という時間が設けられていました。初めての試みだそうです。開業して間もない僕は喜び勇んで、参加させていただきました。そこでは子どもたちのためにという熱い思いを持たれた先生方がたくさんおられた上に、僕と同じように小児科出身の先生方も多く、すごくうれしくなりました。さらには僕が大学6年生のときに「児童精神科をするなら、まず小児科を勉強しなさい」と教えてくれた先生に13年ぶりに再会できました。

先生方の意見の中では、お母さんのケアが大切である、こどもに関わる関係機関から仕事の依頼が多い、デイケアを併設すると経営が厳しくなるなど、僕が感じている問題、知らなかった問題までもが話題になっていました。

全国的に児童精神科医はまだまだ少なく、今後児童精神科医を育てる研修機関として、クリニックが位置づけられるそうです。改めて考えてみても、子どもの心の問題はやはりクリニックが受診もしやすく、症状や問題が複雑化、重症化する前に受診される患者さんが多く、児童精神科の研修にはクリニックが欠かせないと思います。

来年以降、1年に1-2回、この交流会が開かれる予定です。全国の児童精神科クリニックの先生方と医療についてだけでなく、経営、子どもを取り巻く状況、それぞれの工夫、地域ごとの特徴などについても情報交換していく中で、本当に多くのことが学べそうで、期待が膨らむ交流会でした。


2014年10月10日金曜日

日本一自殺率の低い町

自殺率を高める因子(病気、貧困など)はたくさん研究されてきました。それに対して自殺を予防する因子が研究されることは少なかったようです。それを研究されている方の記事を新聞で読みました。和歌山県立医大の岡檀(おか まゆみ)先生です。

自殺を予防する因子を調べたいと考えた岡先生はその日本一自殺率の低い町、徳島県海陽町を訪れて、3300人へのアンケートに加えて、聴き取り調査を現地で行ったそうです。それによると、赤い羽根募金が集まりにくい、老人クラブ加入率が低いなど、他の人と足並みを合わせるのではなく、いろんな人がいたほうがいいという気質が浮かび上がってきたそうです。また、海陽町では昔から「病、市に出せ」という言葉があるそうです。病とは対人関係のトラブル、事業不振など人生における辛いこと。つまり、やせ我慢はやめて早めに弱音を吐けと勧める意味だそうです。なんかホッとしましたね。

これまで自殺予防には絆や人とのつながりが重要であるといわれてきました。しかし実際に自殺多発地域では緊密な人間関係がゆえに、かえって悩みや弱みを出せずに助けを求める行動ができないことも明らかになったそうです。絆って耳触りのいい言葉ですもんね。岡先生の調査の結果では海陽町では生活面で協力する人は少なく、立ち話やあいさつ程度のあっさりとした関わりを持つ人が大部分だそうです。つまり、ゆるい結びつきが海陽町の特徴だそうです。

患者さんから、社会の中で自分の悩みを打ち明けたら、まわりから何か言われる、批判される、もう大人なのに意気地なしで我慢ができないと思われるということをたくさん聴いてきました。また僕たちは子どもの時から我慢だとか、絆を大切にしなさいという言葉を聞きすぎて、その呪縛から逃れられない部分もあります。

僕は子どもの時に規範、我慢、絆を教えてもらい、それを大人になるにしたがって部分的に緩めていいところを徐々に知っていくことこそ、大人になることではないかと考えています。絆にしても相手によって異なる適切な距離を知ることも大人になること。

大人になりながら、自分なりのさじ加減を知ることができれば、生きやすくなるのではないかと思っています。

2014年10月6日月曜日

こんなことを話す場所がない

僕はこれまで患者さんのお話をただただ聴くことで、喜んでもらえたとき、内心、「僕は何もしてないのに、こんなんでいいのかなあ」と半信半疑でした。

そんなときにある患者さんから「ここで話せるだけで救われるんです」と言われ、はっとしました。患者さんは自分の抱えた問題をいろんなことが気になって、周囲の人に簡単には話せない。そのときに、ただ話を聴くことも大切な治療なのだと気づきました。これはどこの心理療法の本にも書いてあることなのですが、それに僕自身が心から納得できていませんでした。その理由は自分が治療として、患者さんに何かを施さないといけないという僕自身の固定観念でした。患者さんが治るのを手伝うというスタンスでいいのではと思っていながら。。。

ただ話をお聴きすることも大切な治療。これをまた自分の治療のひとつとして取り入れていきたいです。

当然ですが、まだまだ自分の考えや治療法はまとまりません。でもそれでいいのかなとも思います。融通無碍。最近はこれが目標な気がしています。


2014年10月1日水曜日

落ち着かず、目を合わせない人に出会った時

僕はこれまで落ち着かず、目を合わさず、返答も少ない患者さんに出会うと、「この人、やりにくいなあ」と思ってきました。それが最近、少し変化を自分の中で感じています。

少し想像してみると、なにか不安を抱えた人が、精神科を受診しようか迷い、クリニックに電話をして予約され、実際にクリニックをたずねて来られ、診察室に入り、はじめて会う精神科医と自分の抱えた問題の話をする。これって、普通に考えて、かなり緊張することですよね。

確かに、たまにはおられます。初対面から打ち解けすぎじゃないかと思うくらいリラックスした口調と態度の大阪のおばちゃん。僕らは何十年も前から友達か!と思わせる人(笑)。でもそんな人は少数派でしょう。

つまり、クリニックを受診するまでに、いくつもの段階を経ているわけです。それを想像すると、診察室の中でうまく振る舞えなくて、当たり前。逆に、そんなに上手に振る舞える人はそれほど状態が悪くないのかもしれない。その初対面の緊張をいかにほぐして、話をしてもらえるようにもっていくのが精神科医の仕事ですよね。さらにはその表情や態度から、状態を想像しないといけないわけです。

今更ながら、こんな当たり前のことを開業して1年経ってようやく気づきました。本当にお恥ずかしい話です。これも日々の臨床の中で、患者さんたちが僕に教えてくれました。患者さんから教えてもらったことを次の患者さんに還元していけたらいいなと思います。