2014年3月25日火曜日

なぜ精神科医はすぐに薬をだしてしまうのか

薬は医者にとって本当に大きな存在です。診断までは医者がして、治療は薬がしてくれる。特殊な治療手技を必要としない外来診療であればメインの流れと言えます。

精神科医も同じです。寝れないと聞けば睡眠薬、不安だと言えば抗不安薬、イライラするなら抗精神病薬、教室で席に座っていれないならADHDの薬・・・。

「医者にかかって、何か一つ症状を訴えれば、薬が一つ増える」。これは精神科ではそれほど珍しいことではありません。なぜならこれは患者さんから何度も教えてもらった言葉だからです。「診察が始まって5分で人格障害と言われました」、「診察の前にチェックシートに○をしたらADHDと診断されて、~という薬を出されました」。大概いろんな医者の話を聞いてきたつもりの僕も、これらの言葉の前には何も言えませんでした。

なぜ精神科医はこんなにも薬を出すまでの時間が短いのでしょうか?

理由は2つあります。
1つ目は診断から治療までを問診のみでするから
2つ目は薬を使わない治療は苦しいから

まずは1つ目について。
内科や外科の先生は診察のあとにいろんな検査をしてから、薬を出すという流れなので少し時間がかかります。一方で精神科では検査がほとんどなく、問診が検査に相当するため、診断から薬を出すまでの時間は必然的に短くなります。また患者さんとしても薬をもらうと何かしてもらった気になるので、納得しやすいという現状もあります。

そして2つ目について。
実は薬をすぐに出してしまう精神科医の気持ちはすごくよくわかります。理由は簡単です。精神科医として患者さんの症状を丁寧に聞いたり、症状を治す方法を探すにはものすごいエネルギーを消耗します。患者さんの症状対してその時の想像力を最大限に活用して治療法を模索するわけです。その上、その症状を治すためには精神科医としての技術が必要なのです。さらにはこれらを短い外来診療の中で行うことはそれほど簡単ではありません。「あっ、寝れないのね、じゃあ、この薬出しとくね」という流れが単純に楽なのです。薬を出すと、それ以上はその症状について話をせずに済みます。

僕は「症状一つに薬一つ」という治療を完全否定はしません。たとえば幻聴や妄想、患者さん本人ではコントロール不能な気分の起伏の症状には薬がやはり一番効果的です。僕もそのときはまずは薬物療法です。実は僕は精神科医になってすぐのころに薬をできるだけ出したくない気持ちが強すぎて、症状から何とか治療法を探そうと、無駄に患者さんの症状を長引かせてしまったことがありました。追い込まれたのちに薬を出した途端、その患者さんの症状が消えたのです。その時は本当に申し訳ないことをしたなと思いました。なので精神科では薬が第一選択ということがやはりあります。

ただ、一番大切なことは患者さんの症状を丁寧に聞けるのか。その体力や気力が自分にあるのか。それにかかっていると思います。そこが面倒くさくなってしまうと、もう「症状一つに薬一つ」という状態に陥るわけです。精神科医として生きていく上で、患者さんの症状を丁寧に聞くという姿勢はいつまでも持っていたいと思っています。

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