2014年1月4日土曜日

僕には何もないから

「どんな治療をしてもらえるんですか?」、「治療にはどれくらいかかりますか?」、「良くなりますか?」

はじめてお会いする患者さんやご家族によく尋ねられる質問です。僕自身も一人で考えます。患者さんを前にして、自分は何ができるのか。どこまでよくできるのか。患者さんは時間とお金を払ってわざわざ来てくれている。それにどう答えていくのか。

正直なところ、患者さんを前にしたときに自分がこれまで学んできた知識や「~療法」という治療法を念頭に置いて治療しているわけではありません。まずはただひたすら患者さんの状態を把握するためにお話を聴いて、どんな状態かな、どんなことができているのかな、そのストーリーをまとめることに腐心するだけです。そのあとに、どこから手をつけたらいいのかを考えて、大まかな治療の道筋を立てて、それをお話して初診を終えます。

先日のスイッチインタビューで作家の天童荒太さんが女優の中谷美紀さんに「どうしてそこまでなりふり構わない演技ができるのですか?」という質問に中谷さんが「舞台に立つと自分には何もないことに気付くんです」と答えておられました。今や、日本を代表する女優になっても自分には何もないと答えられる正直さ、謙虚さに驚きました。僕もこの時に、あっ、僕も同じだと思いました。僕には何もありません。何もないという気持ちから始まる。何もないから患者さんに向き合うしかない。その中で今まで勉強してきたこと、考えてきたことが自然と出てくる。その時に自然と出てくるものが本当の僕の実力や技術なのだと思っています。意識して何かの奥義を出すわけではありません。医者になってすぐのときは自分が勉強したものに当てはめようと、薬や治療法の枠に患者さんを当てはめて考えていました。でもそれでうまく行くことはあまりありません。

いつも真っ白な自分でクライアントに向き合うこと、それがプロだと信じています。

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