2013年11月20日水曜日

病気なのか、病気じゃないのか

日本では精神科の病気の診断にはアメリカの精神医学会やWHO(世界保健機構)が決めた診断基準をもとに行うことが主流になっています。

僕には基本的に典型的な病気じゃない限りは患者さんを病気にしたくないという気持ちがずっとありました。

たとえば、うつ病の診断基準なら

「症状の臨床的著しい苦痛または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を起こしている」

という一文があります。これでいくと何らかの機能が落ちてないと病気じゃないので、仕事や家事ができてしまうと病気じゃないみたいに理解されてしまいます(診断基準の存在の良し悪しもあります)。

ただまあ、言ってしまえば、僕の勝手な「病気だと気の毒だ」という気持ちでしょうか。つまり、診断基準をすべてきちんと満たして、はじめて病気だとしていました。もちろん、診断基準をきちんと使いこなすことが前提です。ただ精神科では病気か病気じゃないかのラインは誰の目にも見える形で明確にするのは難しい部分は確かにあります。

昨日はいつものように福岡に山上先生に会いに行っていたので、これを相談したところ、

「それはあなたの病気に対する偏見。患者さんを病人にしたくないなら、医者をやめないと。私たちは病気を治すのが仕事。治療は人生相談じゃない。」

と言われました(もちろんやさしく^^)。

たしかに今までの僕の経験でも典型的な病気でない方に「まだ病気とはっきり言えるレベルではありません」と説明すると、患者さんから「そうですかあ、病気じゃないとしたら、どうしたらいいのかわからなくなりました」と言われたことが何度もありました。僕としては「病気じゃないですよ」というので安心してもらおうと思っていたことが、裏目に出てしまっていたのです。病気と言われて、安心する人とそうでない人もいるでしょう。ただ、病気となると、医者と患者さんで一緒に立ち向かっていこうと思える。

このお言葉は僕にとっては衝撃的でした。僕は今まで患者さんという「人」をメインに診ていましたが(これは悪いとは思っていません)、「病気」という視点もしっかり持たないといけない、自分の精神科医としての姿勢を改めないといけないと、帰りの飛行機の中でひとり思っていたのでした。


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