2013年8月13日火曜日

患者さんが診察室で涙されるとき

その方の状態、あるいはお子さんの状態を把握し、それに合わせてこちらが理解を示すことができたとき、患者さんや親御さんは涙されることがあります。そのときは自分がその方の琴線に触れることができた気がして、内心、一瞬ほっとします。でもそれはその人の状態を本当によくするのかは別です。単に人を泣かせればいいのではない。ここを勘違いしてはいけない気がします。

テレビでえらい先生が相談に来た芸能人を泣かせて、みんなで泣くというシーンがあります。もちろん、人は泣くことでほっとしたり、気分が楽になる部分があるでしょう。ただ、人を泣かせるということは、その人の一番つらい部分に触れるということです。そこに触れるということは、その人の頭の中で辛かった経験を想起させ、状態を一旦悪くさせるということです。それをしっかり元に戻せる自信がなければ最初から触るべきではありません。人の一番辛い部分に触れるということはかなり慎重にならないといけない部分です。トラウマ(心的外傷)の治療も同じです。生命の危機に直面するトラウマを受けた人の心に軽々しい気持ちで触れるというのは最もしてはいけないことです。人の痛みに触れるときには細心の注意を払うべきです。プロとしてはもちろん、回復させることができることが前提です。なので、僕としては患者さんの一番辛い部分に触れるときはかなり慎重になってしまいます。戻せる自信があるときは積極的に話しますが、戻せるかどうかわからない時には、僕はあえて黙るようにしています。それはには2つ理由があります。1つ目はこちらが黙ってその人のお話をお聴きする、受け止めるという姿勢自体が治療になることがあるから。2つ目に人の心の痛みを知ったかぶりすることほど、罪深いことはない気がするからです。

人の心って、そんなに簡単に他人が理解できるわけではありません。ご自身さえも自分の気持ちを理解できていないことも多々あります。一人の考えや視野なんて小さなものです。そんな気持ちで診療していきたいです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。