2013年6月29日土曜日

「子どもと二人で話してください」という言葉

「子供と二人で話してください」と診察室から出て行こうとするお母さんに出会うことがあります。

精神科医に自分の子どもを会わせたら、その子の気持ちを引き出して、その子の辛いをことを話だし、楽になるだろうと考えて来院されているようです。そのお気持ちはすごくよくわかります。藁をもつかむ思いで来院していただいているわけですから、「ここに来たらプロの話術で何とかなるんじゃないか、本人の心のもやもやをときほぐしてくれるんじゃないか」と思われます。ただ、なかなか現実は難しく、僕たち精神科医も人間なので、地道にその患者さんと関係を作り、その患者さんを知ろうとする時間が必要なわけです。

普通に考えてみてください。
子どもが初対面の大人に会って、いきなり自分の気持ちを吐露するなんて不可能ですよね。

精神科の世界では「ラポール」という言葉をよく使います。患者さんと医者との関係を表す言葉で、「治療にはまずラポールを作ることが大切である」と精神科の教科書にはよく書いています。僕も診察室の短い時間の中で何とか子どものとの関係を作ろうと頑張るわけです。

先日、ある精神科医の先生の講演で聞いた話です。その先生が飲み屋で飲んでると「私の心を読まれそう」とよく言われるそうです。そのとき、その先生は内心、「そんなの読めるわけないだろ!」と思うそうです。当たり前ですよね。精神科医は読心術を持ってるわけではありません。

昔、不登校の娘さんとお父さんが初めて来られて、「学校に行けるようになる方法を教えてください」といわれるので、「今日、はじめてお会いしてすぐに方法を見つけることは難しいです。少し時間をかけて診させてください。」とお伝えすると、そのお父さんに「あなたは医者でしょう」と怒られたことがあります。その時、思わず「僕は神様ではありません」と言ってしまいました。そのあと、自分の言動を反省したのは言うまでもありません。

でも精神科医には精神疾患の基礎知識、精神療法の技術、たくさんの患者さんを診てきた経験、さらに普段から一人の人のことを一生懸命に知ろうとします。つまり一人一人の患者さんをかなり真剣に観察します(もちろん精神科医以外でも真剣に人を観察する仕事はたくさんあります)。

ここで誤解がないように言わせてください。僕の目標は、当然、お父さんやお母さんが望まれる通り、「子どもと話すこと」で、その子どもの状態をよくすることです(必ずしも二人きりで話さないといけないわけではありません)。つまりお父さんやお母さんと僕の目標は同じです。ただ、「本人と関係ができるまで、時間をください」ということです。

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